消費税率10%引き上げによる教育無償化は本当に可能か?

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教育 費用 お金

 

衆議院が解散され、10月22日に総選挙があることが決まりました。それに伴い、安倍政権は突如、消費税率10%への引き上げによる税収入を、後代への負担のつけ回しの軽減である政府の借金の穴埋めではなく、教育無償化や社会保障制度の見直しに利用するという考えを表明しました。

方々から「公言していた使い道と違う」などの声が上がっていますが、もともと、消費税の増税で何をする予定だったのでしょうか?
また今後、教育無償化などを本気で進めようとすればどのくらい財源が必要になるのでしょうか。今回は、消費税率10%への引き上げによる税収入の使い道について詳しく解説します。

1.消費税増税はとりあえずの税収アップには効果がある

消費税の増税は、とりあえずの税収アップには効果があるといわれています。過去、消費税増税は2度行われています。

1度目が1997年(平成9年)に3%から5%へ、2度目が2014年(平成26年)に5%から8%へそれぞれ消費税率が引き上げられました。

それぞれの時期で消費税増税前と増税後の税収を比べてみると、1度目の増税では、国税で消費税が6.1兆円から9.3兆円に、国税全体では52.1兆円から53.9兆円に、地方消費税でも0から2.6兆円(地方消費税は1997年に誕生)にいずれも税収がアップ。
2度目の増税でも国税で消費税が10.8兆円から16.0兆円に、全体では47.0兆円から54.0兆円に、地方消費税でも2.6兆円から5.0兆円にいずれも税収がアップしています(※国税と地方税では影響にタイムラグがあるため、地方税でそのタイムラグを考慮済)。
実際の数字からも、消費税の増税はとりあえずの税収アップには効果があることが実証されています。

2.当初予定されていた消費税引き上げによる税収入の使途や目的

では、当初予定されていた消費税率引き上げによる税収入の使途や目的が、どのようなものだったかを見てきましょう。政府はその政策の柱として、社会保障と税の一体改革を挙げていました。

2-1.財政健全化目標の達成

社会保障と税の一体改革とは、「社会保障の充実と安定化」と将来世代への負担の先送りの軽減などの「財政健全化目標の達成」を同時に達成するため、税による(税制根本改革)安定財源を確保することです。消費税率引き上げによる税収増加分をすべて使って、安定財源を確保しようとしていました。具体的な使い道は以下の4種類です。

  1. 基礎年金を安定的に給付するための財源
  2. 子供・子育て支援や医療・介護、公的年金制度などの社会保障を充実させるための財源
  3. 消費税引き上げに伴う社会保障4経費の増加に伴う財源
  4. 安定的な制度を構築するための後代への負担のつけ回しの軽減のための財源

8%から10%へ税率を引き上げる際には5.8兆円の税収の増加を見込んでおり、そのうち3分の2にあたる約4兆円は、安定的な制度を構築するための「後代への負担のつけ回しの軽減」に充てる予定となっていました。

29年度消費税増収

【出典】内閣府・厚生労働省:平成29年度における子ども・子育て支援新制度に関する予算案の状況について

2-2.目標達成時期は不明に

財政健全化については、もともと、2020年度に基礎的財政収支(PB)を黒字化すると目標を掲げていましたが、今回の消費税増収分の使途変更に伴い2020年度での達成は困難になると考えられます。

引き続き基礎的財政収支(PB)の黒字化を目指しますが、今回の衆議院選挙では、具体的な時期を目標として掲げないことになっています。

3.教育無償化について

では、安倍政権が突如表明した教育無償化にはどれぐらいの税金が必要なのか、考察してみましょう。

3-1.無償化の試算

政府の試算によると、公立・私立の幼稚園や保育所に通園する3~5歳の幼児教育・保育の無償化には、年7,300億円以上の追加公費が必要とされています。
0~2歳児全員の保育料を無償化するとさらに4,400億円の公費がかかり、0~5歳児まで合計するとその額1.2兆円以上に上ります(※0~2歳児の無償化は所得制限も検討)。
また、大学まで含めた完全な教育無償化に必要な費用は5兆円程度との試算もされています。

教育 学校

上述した通り、8%から10%へ税率引き上げにより見込まれている税収の増加は、5.8兆円です。
もし、大学までを含めた完全な教育無償化となると、10%へ税率引き上げにより見込まれている税収の増加額ほとんどを、無償化に充ててしまうことになります。まだ、どこまでの教育無償化をするか議論がされている最中ですが、教育無償化以外にも当初予定していた「後代への負担のつけ回しの軽減」など4種類の使い道についても待ったなしの問題であり、後回しができません。

3-2.教育国債の発行、社会保険料に上乗せなど

これだけのことを行うには、消費税増税分だけでは足りないかも知れないという意見も出てきています。財源が足りない場合は、教育国債の発行や社会保険料に上乗せする形となるこども保険の徴収などで賄うという案も出てきているようです。

また、教育無償化は国民の中でも賛否が分かれている問題です。自民党内や国会の中でも議論がつくされていない感があり、まだまだまとまりきれていないといっていいでしょう。
それ以前に、教育無償化はそもそも自民党ではなく、民進党が公約として掲げてきたものです。今回の消費税率引き上げによる税収増加分の使途の変更案を、衆議院解散の争点にするのは付け焼き刃的な感もあるのが否めません。

衆議院選挙に向けてこれから具体案などが議論されていくことになりますが、本当にその数字で今後の社会保障などが立ちいくのかなど、今後の動向をしっかりと見守る必要があるでしょう。

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