医薬品、栄養ドリンク、健康食品は軽減税率の対象になる?
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[公開日] 2018年12月30日
[更新日]
軽減税率8%の対象は、簡単に要約すれば、次の2つです。
新聞については、それほど議論の余地はないと思いますが、飲食料品の種類は多数ありますので、どこまでが対象になるか、わかりにくいです。
そこで、軽減税率の対象となる商品について、特に、飲食料品の範囲について、詳しく解説します。
目次
まずは、飲食料品の範囲について簡単に説明し、2章以降で、詳細に説明します。
ここでいう「飲食料品」とは、食品表示法で定められている食品のことです。野菜、果物、肉、魚、菓子など無数に種類がありますね。
酒類も食品の範囲に含まれていますが、軽減税率の対象にはなりません。いわゆる嗜好品は除くという趣旨でしょう。
また、飲食料品を購入する場合は軽減税率の対象ですが、外食では対象になりません。調理されて提供される食事は、飲食料品というよりも、食事を提供するサービスだからです。
以上をまとめますと、軽減税率対象の「飲食料品」とは、次のようになります。
新聞については、「○○新聞」という商品名で販売されていますので、その範囲はほぼ明確ですが、主な条件が2つあります。
一つは、定期購読の契約をしていることです。自宅やオフィスに配達される新聞は軽減税率の対象ですが、コンビニや駅中の売店で購入する新聞は対象になりません。
二つ目の条件は、週2回以上発行される新聞に限るということです。一部を除いて、たいていの新聞は毎日発行されますので、ここはあまり考えなくても良いでしょう。
軽減税率対象の「新聞」とは、次のとおりです。
ここでは、飲食料品の範囲についてさらに詳しく述べていきます。
さきほど、「飲食料品」の範囲とは、食品表示表に規定する「食品」であると解説しました。
「食品」の範囲について、食品表示法2条1項では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に規定する「医薬品、医薬部外品および再生医療等製品」を除き、「食品衛生法」に規定する「添加物」を含むと定めています。
つまり、「食品」には「加工食品」「生鮮食品」「添加物」が含まれ、これらが軽減税率の対象となります。
一方で、食品表示法2条2項に規定されている酒類は除かれます。
他に、食品と食品以外のものを一体で販売する場合は、「一体資産」と呼ばれ、条件を満たせば軽減税率の対象となります。
軽減税率の対象のものと対象外のものを表でまとめます。
軽減税率の対象 | 軽減税率の対象外 |
---|---|
加工食品 生鮮食品 添加物 一体資産 | 酒類 医薬品、医薬部外品 |
食品表示法で定める食品には、どんなものがあるのでしょうか。
すべてを書ききれませんが、食品表示法の別表に記載されている主なものを挙げると、次のようになります。
【出典】食品表示基準 別表第一
【出典】食品表示基準 別表第二
食品であるか、食品でないかの細かい区別は、食品表示法に従うことになります。
たとえば、食用となるスッポンやウミヘビは食品表示法に記載がありますので、軽減税率の対象になりますが、食用となるザザムシやイナゴは食品表示法に記載がありませんので、軽減税率の対象になりません。
また、生きた魚介類は食用であれば軽減税率の対象ですが、牛、豚、鳥などの生きた家畜の販売は食肉用であっても軽減税率の対象にはなりません。
つまり、生きた魚介類はその販売時点で、ちょっと加工(切る、加熱するなど)すれば、すでに食べられる状態といえますが、生きた家畜はその販売時点では食べられる状態といえないからです。
他に、ペットボトル等の容器に入ったミネラルウォーターは軽減税率の対象ですが、水道水は対象外です。
かなり細かいところですが、迷ったときには、一般的に人の食用として販売されているかどうかがポイントといえます。
たとえば、生きたまぐろは食用なので軽減税率の対象ですが、同じ魚でも生きた金魚は食用ではないため対象外となります。
またペットフードは栄養価もあり人が食べることもできますが、これはあくまでもペット動物のために販売されているものであり、人の食用として販売されていませんので、軽減税率は適用されません。
いくつかの例について表にまとめます。食品添加物それ自体は、一般消費者がそのまま口にするものではありませんが、食品衛生法に規定されている食品添加物は、食品に該当し軽減税率の対象となります。
食用として販売しているローズオイルやラベンダーを購入した人が、それを香水の原料として使用したとしても、食用として販売している限り、軽減税率の対象です。
逆に工業用水として販売しているローズオイルやラベンダーは、それを購入した人が食用に利用したとしても、食用として販売されていませんので、軽減税率は適用されません。
このように、食用にも工業用水にもなりうる添加物については、どちらの用途で販売されているかが重要になりますので、メーカーは商品の用途を明確に表示する必要があります。
参考までに、重曹のように、食用にも清掃用にも利用できるものとして販売されている場合には、どのような用途に利用したとしても、食用ですので、軽減税率の対象です。
ビール、ワイン、日本酒などのお酒も食品の一種ですが、酒類は軽減税率の対象から除かれています。そのかわり、酒類に該当しなければ、軽減税率の対象となります。
酒税法2条1項では、アルコール分1度以上の飲料を「酒類」として定めていますので、アルコール度数で判定することになります。
ノンアルコールビールはアルコール分を含みませんので、軽減税率が適用されます。
実際にアルコール分がどのくらい含まれているかは、メーカーしかわかりませんので、各メーカーはアルコール度数を確実に表示する必要があります。
ワインは食品の原材料として利用されることもありますが、アルコール分1度以上であれば酒類のため、軽減税率の対象となりません。
みりん、料理酒など調味料に利用されるものでも、アルコール分1度以上であれば、やはり軽減税率の対象となりません。
ただし、みりん風調味料などで、アルコール分1度未満であれば、軽減税率の対象となります
ウィスキーボンボンはチョコレートの中にウィスキーやブランデーが入っているチョコレート製品です。
通常2~3.5%程度のアルコール分が含まれていますが、製品としてはチョコレートに分類されるため、酒税法が適用されません。よって、軽減税率の対象となります。
薬局で処方される医薬品が食品でないことはわかりますが、コンビニやスーパーで購入可能な、栄養ドリンクやサプリメントは軽減税率の対象になるのでしょうか?
これらに関しては、医薬品医療機器等法に規定する「医薬品」「医薬部外品」「再生医療等製品」(まとめて「医薬品等」)に該当すれば、軽減税率の対象になりませんし、該当しなければ軽減税率の対象になります。
サプリメントには、特定保健用食品、栄養機能食品、健康食品、美容食品などと呼ばれる様々な種類がありますが、「医薬品等」に該当するかどうかで決まります。
どれが「医薬品等」に該当するか、または該当しないかは、商品のパッケージなどに記載されています。
ここまでにあげられた、いくつかの例に少しプラスして表にまとめます。
食品表示法に規定する 飲食料品に該当する (軽減税率の対象) | 食品表示法に規定する 飲食料品に該当しない (軽減税率の対象外) |
---|---|
ウミヘビ等の水産動物類 | 昆虫 |
生きている魚介類 | 生きている家畜 |
ペットボトル入りミネラルウォーター | 水道水 |
かき氷や飲料に用いられる氷 | ドライアイスや保冷用の氷 |
人が食べること想定しているもので ペットに餌として与えられる食べ物 | 人が食べることを想定していない ペットフード |
人の食用のもみ | 種もみ |
おやつや製菓の材料に用いられる かぼちゃの種など | 栽培用として販売される果物の苗木、種子 |
食品添加物としての金箔、重曹 | 食品添加物ではない金、重曹 |
食用の岩塩 | 工業用に用いられる塩 |
みりん風調味料 | 本みりん、料理酒、ワイン |
ノンアルコールビール、甘酒 | ビール、発泡酒 |
特定保険料食品、栄養機能食品、 健康食品、美容食品 | 医薬品、医薬部外品、 再生医療等製品 |
栄養ドリンク風の清涼飲料水 | 医薬部外品である栄養ドリンク |
どちらに該当するかわからないときは、最寄りの税務署にご相談ください。
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