イギリスの消費税と軽減税率

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イギリス

日本と比べても物価の高いイメージが伴うイギリス。
その一因が、20%という高い消費税率ですが、国民の日常生活に支障が生じないよう政府の配慮もなされています。

旅行前に税率区分を知っておくことで、現地気分を味わえ、かつ、お得な旅につながる楽しさも。ここでは、押さえておきたいイギリスの消費税と軽減税率の特徴をご紹介しましょう。

1.イギリスの消費税(付加価値税)

1-1.ヨーロッパで消費税を引き下げた最初の国

日本の消費税にあたるイギリスの付加価値税(VAT:Value-added tax)は、1973年に導入されました。導入当時の税率は10%でしたが、2011年にはキャメロン政権の下で、標準税率20%へと引き上げられました。

一方で、イギリスは、ヨーロッパで消費税引き下げを行った最初の国としても知られています。2008年12月から13か月間、サブプライムショックを受けて、同国の消費税は17.5%から15%へと引き下げられました。目的は景気対策にあり、ブラウン首相は「家計で苦しむ全世帯の救済に乗り出す」と呼びかけました。

その結果、実質GDP成長率は、2009年の-4.9%から2010年には+1.3%へ(JETROデータ)。英国の有力シンクタンクは、「減税をしなければさらに景気は悪化しただろう」と評価しました。

もともと所得税の母国であるイギリスでは、直接税が高い比重を占めていましたが、サッチャー政権下で直接税から間接税へのシフトが進み、その後も同じ路線が踏襲されてきました。1973年の導入以来、付加価値税の税収は総税収の20%を超えています(2015年は26.1%)。

1-2.非課税とゼロ税率の範囲が広い

イギリスの付加価値税の特徴は、ゼロ税率を採用し、非課税の適用範囲も広くすることによって、付加価値税の逆進性に配慮している点です。

ゼロ税率は、食料品、書籍・新聞・雑誌、子ども用衣料など、日常生活に必要と考えられる品目に幅広く適用されます。

一方で軽減税率は1994年に初めて導入されましたが、対象範囲は狭くなっています。なお、付加価値税は内税なので、価格は税込価格で表示されます。

2019年2月時点での税率区分は、非課税、ゼロ税率、軽減税率が5%、標準税率が20%です。フランスと比較されることの多いイギリスの付加価値税ですが、フランスはゼロ税率がなく軽減税率を多用しているため、両国は対照的といえます。

なお、ゼロ税率とは、0%で課税されるという意味です。売上に対する課税はなく、仕入段階で課せられた税は仕入れ税額控除を通じて控除・還付されるので、結局売り手側で税務処理されることになります。

イギリスの税率と適用品目
税率適用品目
非課税土地・建物の譲渡・賃貸、保険、郵便、賭け事、
金融、教育、医療・福祉、埋葬・火葬、
公的団体による美術館・動物園等の入場料など
ゼロ税率食料品(人間の食料、動物の飼料は原則としてゼロ税率。
ただし適用除外品目が多数)
上下水道、出版物(書籍・新聞・雑誌)、運賃、
処方に基づく医薬品、医療用品、
子ども用の衣料・靴、女性用衛生用品など
軽減税率
(5%)
家庭用燃料・電力の供給、
高齢者・低所得者を対象とした暖房設備・防犯用品等、
チャイルドシート、避妊用品など
標準税率(20%)上記以外の多くの商品、サービスに適用されます。
レストランでの飲食、ケータリング、宅配、温かい食べ物のテイクアウトを含みます。
また、冷凍菓子類、菓子類(ビスケットを除く)、スナック菓子類、
酒、飲料(フルーツジュースとペットボトルの水を含む)などにも適用されます。

なお、イギリスの付加価値税の課税ベースの狭さは、その導入当初から問題視されていました。EUは、以前からゼロ税率に対しては否定的で、その指令で、家庭用燃料・電力などについて標準税率化の動きもありましたが、結局は軽減税率にとどまっています。また、軽減税率の対象が徐々に増えてきているのが、近年の特徴です。

2.まぎらわしい税率区分と課題

2-1.酒やジュースなどの飲料類

水道水はゼロ税率の対象ですが、それ以外の飲料は標準税率が適用されます。水についても、瓶やペットボトルに詰めたものは標準税率です。コーヒー、ココア、茶、ハーブ茶及びこれらの加工品はゼロ税率です。

2-2.菓子類

アフタヌーンティーの歴史が根付いているイギリスでは、ケーキ類とビスケットは日常的な食べ物と考えられゼロ税率です。

ただしチョコレート菓子の取扱いは、複雑です。
板チョコ・ボンボンのようなチョコレート菓子は贅沢品とみなされ標準税率ですが、ケーキ類はチョコレートを使っていてもゼロ税率、チョコレートでコーティングされたビスケットは標準税率です。

境界が曖昧な一例として、しばしば挙げられるのがジャファ・ケーキです。ソフトなビスケットにオレンジを挟んだものにチョコレートをかけたこのお菓子について、製造元のマクビティはビスケットではなくケーキだと主張。裁判で認められたことから、1991年にゼロ税率となりました。

2-3.テイクアウト

レストランなどの店内で食べる場合は標準税率の対象ですが、店内で食べないで持ち帰るもの(テイクアウト)は、食料品の販売としてゼロ税率の対象になります。しかし、即時に食べられるよう温かい状態で販売するもののテイクアウトは、標準税率が適用されます。

「販売時点で気温より高い温度のもの」には標準税率が適用される、と覚えておけば間違いがありません。

したがって、イギリスの代表的な庶民のランチであるフィッシュ・アンド・チップスやマクドナルドのハンバーガーには標準税率が適用され、一方で寿司やサンドイッチはゼロ税率の適用となります。コンビニなどで販売する食料品であっても、レンジで温めて渡すような場合は標準税率の対象になります。

2-4.複雑な制度の問題点

このイギリスの消費税については、次のような問題点が指摘されています。

  • 軽減税率の対象になる食料品の範囲の線引きが大変難しいこと、
  • 店内飲食か店外飲食(テイクアウト)かの事実認定をめぐって、税務当局とトラブルが発生しやすいこと、
  • 軽減税率を設けることで各方面から追加要請が提起され、政治的発言力の強い業界の物品等が加えられる傾向があること

極端なケースとしては、世論によって税率が覆されたことさえあります。対象はパスティ(牛肉・タマネギ・ジャガイモなどの具をパイ生地で包んだもので、庶民的なおやつ)でしたが、ホットフードとして政府が標準課税を適用しようとしたところ、キャメロン首相への風当たりがあまりに強く、政府は決定を撤回しました。

3.EU離脱に伴う影響

2016年、イギリスは国民投票によりEU離脱を決定しました。最終的な着地点は未だ見えないままですが、EUを離脱すると、EU規則およびEU指令が適用されなくなります。離脱時点までのイギリスVAT法は存続しますから、離脱後も適用されます。離脱に絡み緊急に必要となる立法の多さにかんがみれば、当面の間、必要最低限の改正にとどまると予想されます。

ただ、離脱後は、EU加盟国と足並みをそろえず、イギリスが独自に税率や軽減税率対象品目などを決めることが可能となります。

4.イギリス旅行をお得に満喫するには

イギリスの物価高を消費税だけで説明することはできませんが、上記のように、消費税率がゼロの品目は比較的価格が抑えられていると理解しておけば、予算に応じた旅が楽しめるでしょう。

たとえば、パンや乳製品は、イギリス人の食生活に不可欠として日本の半額程度です。野菜や果物も日本より安く、量り売りされ、輸入品を含め非常に豊富な種類を誇ります。
外食に頼りきるより、スーパーやマーケットを回りこれらの食品を購入することで、お得感も、現地ならでの楽しさも倍増するでしょう。

お土産についても、標準税率の贅沢品に手を伸ばすだけでなく、ゼロ税率の品にも目を向けることで、イギリス国民の生活に馴染んだ魅力的なグッズが安く入手でき、旅の良い思い出になるかもしれません。

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