消費税の課税事業者・免税事業者の違いと判定方法を詳しく解説

★ お気に入りに追加
課税事業者 免税事業者

事業を開始して間もないうちは、本業に精一杯で税金面のことを考える余裕がない方も多いことでしょう。

ただ、様々な税金がある中で、特に気を付けなければならないのは消費税です。
最初は消費税がかからないとは聞いたことがあっても、その基準や理由が分からないと不安になりますよね。

そこで、この記事では、消費税を納めなければならない事業者の基準と、その判定方法について詳しく解説します。

1.消費税の課税事業者と免税事業者

すべての事業者は「課税事業者」と「免税事業者」に分かれます。
まずはこの2つの違いをしっかり押さえておきましょう。

1-1.課税事業者

消費税の課税事業者とは、消費税を国に納める義務がある事業者のことを言います。

事業者は売上の金額とあわせて消費税を受け取りますが、その受け取った消費税を国に納めなければなりません。

お客さんから受け取った消費税をその事業者が懐に入れてしまっては、税金は国に支払われないままになってしまいますよね。
考えてみれば当然のことですが、意外と最初は理解しづらいものです。

なお、事業者は売上の際に消費税を受け取っている一方で、仕入れの際には消費税を支払っているはずです。
その支払った消費税は、売上時に受け取った消費税からマイナスすることができます。

【原則的な消費税の計算方法】

消費税額=売上時に受け取った消費税-仕入時に支払った消費税

上記の計算式が原則的な消費税額の計算方法となります。
なお、ここで言う仕入れとは商品の仕入れに限らず、備品の購入や接待交際費の際に支払った消費税も含まれます。

1-2.免税事業者

消費税の免税事業者とは、消費税を国に納める義務を免除された事業者のことを言います。

先ほど説明した通り、消費税は事業者が国に納めなければなりません。

しかし、一定の条件を満たす免税事業者に限っては売上時に受け取った消費税をそのまま自社の収入として良いことになっています。

免税事業者であっても仕入時には消費税を支払っているため、売上時に消費税をもらわないと大きく損をしてしまうのが理由の一つです。
免税事業者制度には益税問題などの批判もありますが、込み入った話になるのでここでは割愛します。

1-3.課税判定に使用する「課税売上高」とは?

課税事業者と免税事業者の判定方法は「課税売上高」の額によるのが基本です。
したがってまずは課税売上高を理解する必要があります。

課税売上とは、消費税が発生する(課税される)取引に対する売上のことです。
(住居用の賃貸料収入や、介護保険サービスなど非課税の取引に対する売上は、課税売上高には含まれません。)

そして、課税売上高に含まれるのは本業の売上だけでなく、その課税期間中に発生した全ての課税売上が対象となります。
例えば下記の収入も課税売上となります。

  • 社用車や備品の売却収入
  • 所有物件の賃貸料収入(事務所・店舗用に限る)
  • 自動販売機の手数料収入

また、輸出取引等の免税売上も課税売上高に含まれるので注意が必要です。

2.消費税の課税判定方法

ここからは課税事業者・免税事業者の具体的な判定方法を確認していきます。

複数の判定手順がありますが、重要なのは「売上高」と「資本金」だと覚えてください。

消費税の課税判定フローチャート
判定①
基準期間における課税売上高が1,000万円を超えるか?

Yes
課税事業者
↓ No 
判定②
特定期間における課税売上高が1,000万円を超え、
かつ、支払給与の額が1,000万円を超えるか?

Yes
↓ No 
判定③
相続、合併、分割があり、かつ、特例を適用できるか?

Yes
↓ No 
判定④
新規設立法人で、期首の資本金が1,000万円以上か?

Yes
↓ No 
判定⑤特定新規設立法人に該当するか?
Yes
↓ No  
免税事業者

2-1.判定①基準期間における課税売上高による判定

まず最初に判定する項目は、「基準期間における課税売上高が1,000万円を超えるかどうか」です。

基準期間とは、通常その事業年度の前々事業年度のことを言います。
したがって設立1期目、2期目の法人や個人事業主には基準期間がないのが普通です。
基準期間がない場合、この判定は不要となります。

  • 基準期間における課税売上高>1,000万円→課税事業者
  • 基準期間における課税売上高≦1,000万円→判定②へ

課税事業者 基準期間

基準期間における課税売上高は、基準期間において課税事業者であった場合は税抜処理が必要ですが、基準期間において免税事業者であった場合は税抜処理せず、そのままの課税売上高で判定します(※)。

なお、法人で前々事業年度が1年未満の場合は課税売上高を月割りで年換算する必要があります。
ただし、個人事業主は何月に開業しても1月から12月の課税売上として計算するため、年換算する必要はありません。

※厳密には、課税事業者の場合は、税抜きの金額が課税売上高になり、免税事業者の場合は、税込みの金額が課税売上高になります。
ベンチャー企業の新規設立時には免税事業者でスタートするケースが多く、免税事業者から課税事業者になるかどうか判定する際には、税込みの金額で判定します。

課税売上高

「課税売上高」は非常に重要なポイントですので、具体例をあげて、もう少し詳しく解説してみます。
すでに理解できた方は、読み飛ばしていただいて構いません。

例えば、1,000円の商品を販売した場合、課税売上高は1,000円、消費税は80円(税率8%の場合)です。

ただし、上記は課税事業者の場合の計算であって、免税事業者の場合は、消費税込みの売上高を課税売上高とします。
つまり、免税事業者の場合、消費税込みの売上高が1,000万円以下かどうかで判定されます。

仮に、税抜きの売上高が950万円であったとしても、税率8%を入れると、1,026万円になりますので、免税事業者としての基準を満たさなくなります。

免税事業者の基準を満たすためには、税抜きの売上高が925万円9,260円以下である必要があります。そうすると、税率8%込みで、ちょうど1,000万円になります。

初めて事業を起こされる方は、この点によく注意しましょう。

2-2.判定②特定期間の売上高による判定

基準期間の判定で課税事業者とならなかった場合、「特定期間における課税売上高が1,000万円を超えるかどうか」の判定をします。

特定期間とは、通常その事業年度の前事業年度開始の日から6ヶ月の期間をいいます。
なお、特定期間の判定には特定期間中の課税売上高に代えて、特定期間中に支払った給与の額での判定も認められています。

課税事業者 特定期間

いくつかの判定パターンを確認しておきましょう。

例1:どちらも1,000万円を超える場合→課税事業者

  • 特定期間における課税売上高>1,000万円
  • 特定期間における支払給与の額>1,000万円

例2:課税売上高は1,000万円を超えるが、給与の額は1,000万円以下である場合→判定③へ

  • 特定期間における課税売上高>1,000万円
  • 特定期間における支払給与の額≦1,000万円

例3:給与の額は1,000万円を超えるが、課税売上高は1,000万円以下である場合→判定③へ

  • 特定期間における課税売上高≦1,000万円
  • 特定期間における支払給与の額>1,000万円

要するに、課税売上高と支払い給与の額のいずれかが1,000万円以下であればこの時点では課税事業者とはならず、次の判定に進むことになります。

設立2期目の事業者で考えると、半年間の売上が1,000万円を超えるケースは珍しくありませんが、半年間の支払い給与が1,000万円を超えるケースは意外と少ないのではないでしょうか。

なお、判定に使用する給与の額は役員報酬や従業員給与に加え、次のものが含まれます。

  • 残業手当
  • 休日出勤手当
  • 職務手当
  • 地域手当
  • 家族手当
  • 住宅手当など

ただし、通勤手当や出張手当は給与の額には含まれないので注意してください。

また、ここで言う「支払給与の額」は半年間で実際に支払った給与が対象です。
未払分は含めなくていいことを覚えておきましょう。

2-3.判定③相続、合併、分割があった場合の判定

個人事業主が亡くなった父親の事業を受け継いだ場合や、法人が合併や分割で組織再編をした場合に適用される判定です。

「基準期間」「特定期間」の判定の次のステップではありますが、あまり該当する方は多くないでしょう。
相続、合併、分割をしていない事業者は次のステップに進んでください。

この判定は会社の組織再編を悪用して消費税の課税逃れをすることを防ぐために規定されたものです。
判定方法がかなり複雑なのでここでは省略しますが、該当する方は一度調べてみることをおすすめします。

2-4.判定④新設法人の資本金等による判定

「基準期間」→「特定期間」→「相続、合併、分割」の次に来るステップがこの「新設法人の資本金等による判定」です。
この判定は基準期間が無い法人が対象となるため、該当するのは次の事業者となります。

  • 設立1期目の法人
  • 設立2期目の法人

要するに、設立3期目以降の法人と個人事業主にはこの判定は適用されません。
新設法人の資本金等による判定は、次の方法で行います。

  • 事業年度開始の日における資本金の額又は出資の額≧1,000万円→課税事業者
  • 事業年度開始の日における資本金の額又は出資の額<1,000万円→判定⑤へ

注意が必要なのが、資本金の額又は出資の額が「1,000万円以上」である法人が課税事業者となる点です。
基準期間や特定期間の判定では「1,000万円超」だったので混同しないようにしましょう。

また、この判定はあくまで期首時点での資本金等の金額で行います。
期中に増資した場合でも期首時点が1,000万円以下であれば課税事業者とはなりません。

2-4-1.新設法人が調整対象固定資産の仕入れを行った場合

通常であれば設立3期目は「基準期間」「特定期間」によって納税義務を判定します。

しかし、資本金が1,000万円以上であった設立1期目、2期目のうちに調整対象固定資産の仕入れを行った場合には、3期目も自動的に課税事業者となる特例があります。
調整対象固定資産とは、100万円以上の資産のことをいいます。

この特例を忘れていると、「3期目の売上は1,000万円以下だったのに免税事業者になれなかった」という多大な損が生じます。
あくまで設立1期目または2期目の資本金が1,000万円以上の事業者に限定される特例ですが、油断しないように覚えておきましょう。

2-5.判定⑤特定新規設立法人の判定

ここまでの判定を通過した事業者の次の判定は、「特定新規設立法人の判定」です。
特定新規設立法人と言われても何のことか分からないと思いますので、要件を簡単にまとめます。

  • 基準期間がない法人(設立1期、2期目)
  • 事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円未満
  • 事業年度開始の日に特定要件に該当する(売上5憶円超の会社の子会社である)

要するに、ここまでの判定をすべてクリアしてきた「売上5憶円超の会社の子会社」が特定新規設立法人に該当し、その場合は、課税事業者になります。
大企業が節税のために、子会社をたくさん作って、納税を免れることを防ぐためです。

厳密に言うともっと細かい規定があるのですが、多くの事業者にとっては関係が薄い話だと思いますのでここでは省きます。
なお、特定新規設立法人に該当すると、その時点で課税事業者となります。

2-6.高額特定資産の仕入れを行った場合の特例

上記までで判定はすべて終了となるのですが、最後にもう一つ特例があります。
この特例に該当する条件は次のとおりです。

  • 課税事業者であること
  • 簡易課税の適用を受けていないこと
  • 一の取引単位の税抜価格が1,000万円以上の資産を取得したこと

これらの条件に該当すると、その資産を取得した課税期間の初日から3年間は強制的に課税事業者となります。

そもそも課税事業者であることが前提なので設立間もない事業者には関係が薄いかもしれませんが、この特例も覚えておかないと思わぬ損失を被る可能性があります。

3.設立1期目、2期目の判定手順

前章ですべての判定手順を見てきましたが、やや難しい部分もあったかと思います。
ここからは設立間もない事業者の方に分かりやすく、どの判定をしたらいいのかを解説します。

3-1.設立1期目の消費税納税義務の判定

設立1期目の法人には基準期間も特定期間もありません。
さらに、相続、合併、分割や売上5億円超の会社の子会社に該当する方も少ないでしょう。

課税事業者 新規設立

したがって1期目の判定は、「判定④新設法人の資本金等による判定」で解説した期首資本金の金額の判定のみでOKと考えてください。

  • 事業年度開始の日における資本金の額又は出資の額≧1,000万円→課税事業者
  • 事業年度開始の日における資本金の額又は出資の額<1,000万円→免税事業者

なお、この判定の対象は法人のみなので、開業1年目の個人事業主はほぼ自動的に免税事業者となると考えて良いでしょう。

3-2.設立2期目の消費税納税義務の判定

設立2期目の法人も基準期間はありませんが、特定期間はある場合が普通です。(前期が7ヶ月以下の法人の場合は特定期間がないこととされます。)
今回も相続、合併、分割と特定新規設立法人に該当する方はあまりいないとすると、設立2期目における判定は次のようになります。

課税事業者 新規設立

STEP①:特定期間における課税売上高の判定

  1. 特定期間における課税売上高が1,000万円を超えるかどうか
  2. 特定期間における支払給与の額1,000万円を超えるかどうか

この判定で1.と2.の両方が1,000万円を超えた場合、その時点で課税事業者となります。

1.と2.のどちらかが1,000万円以下である場合、STEP②に進みます。

ただし、STEP②は法人のみが対象となるので、特定期間の判定で1.と2.のどちらかが1,000万円以下であった個人事業主はこの時点で免税事業者が確定します。

STEP②:期首資本金の額または出資の金額による判定

  • 事業年度開始の日における資本金の額又は出資の額≧1,000万円→課税事業者
  • 事業年度開始の日における資本金の額又は出資の額<1,000万円→免税事業者

これで設立2期目の判定は終了です。

3-3.設立3期目以降の消費税納税義務の判定

最後に設立3期目の判定手順についても簡単に触れておきます。

課税事業者 特定期間

設立3期目からようやく基準期間がある状態になるため、判定手順は次の通りとなります。
なお、今回も相続、合併、分割の判定は省きます。

  1. 基準期間の課税売上高による判定→1,000万円以下の場合、2.へ
  2. 特定期間の課税売上高(もしくは支払給与)による判定→どちらかが1,000万円以下の場合、免税事業者となる

設立3期目からは「新設法人の期首資本金による判定」と「特定新規設立法人の判定」はなくなり、純粋に課税売上高による判定を行います。

ただし、新設法人であった課税期間中(1期目、2期目)に調整対象固定資産(100万円以上の資産)を購入した場合は3期目も自動的に課税事業者となってしまう点には注意しましょう。

免税事業者から課税事業者になる場合の例

たとえば、平成29年時点で免税事業者であったとします。
平成29年の課税売上高が1,000万円以下であれば、平成30年も平成31年も免税事業者です。

平成29年の課税売上高が1,000万円を超えてしまうと、平成30年は免税事業者ですが、平成31年から課税事業者となります。

また、平成29年の課税売上高が1,000万円以下であっても、平成30年の1/1~6/30の課税売上高が1,000万円を超えてしまうと、上記と同じく、平成30年は免税事業者ですが、平成31年から課税事業者となります。

【出典】個人事業者の場合の基準期間と課税期間 消費税のしくみ|国税庁

3-4.設立初期に節税するには?

ここまで読んでいただけた方は消費税の対策がだいたい見えてきたことと思いますが、念のため設立初期に消費税を支払わなくて済む最善の方法をまとめておきます。

  • 設立2期目までは資本金を1,000万円未満にする。
  • 特定期間の売上が1,000万円を超えたとしても、給与を1,000万円以下に抑える。
    ※特定期間:前年度の最初の6ヶ月間

特定期間の支払給与の金額には役員報酬も含まれるため、半年間の給与が1,000万円ギリギリになりそうであれば、消費税のことも考慮して役員報酬を設定することをおすすめします。

また、実際に支払った給与が対象であり、未払い分は含めなくていいことも留意してください。

4.消費税の納税義務に関係する届出書

消費税の納税義務に関しては税務署に提出しなければならない届出書があります。

  • 消費税課税事業者届出書
  • 消費税課税事業者でなくなった旨の届出書

「消費税課税事業者届出書」は課税事業者に該当することが判明した事業者が提出する届出書で、「消費税課税事業者でなくなった旨の届出書」は元々課税事業者だった事業者が免税事業者となった場合に提出する届出書です。

ただし、これらの届出書の提出を忘れても課税事業者・免税事業者の適用が変わることはありません
あくまで税務署にお知らせする意味での届出書と考えてください。
届出書の提出期限は「速やかに」とされており、明確な期限は設定されていません。

また、これと似たような名称の届出書がありますが、意味はかなり異なります。「選択」という文字が入っています。

  • 消費税課税事業者選択届出書
  • 消費税課税事業者選択不適用届出書

「消費税課税事業者選択届出書」は免税事業者があえて課税事業者を選ぶときに提出する届出書で、「消費税課税事業者選択不適用届出書」はその課税事業者の選択をやめるときに提出する届出書です。

間違えて提出してしまうと課税事業者になってしまうので注意しましょう。

まとめ

消費税の課税事業者・免税事業者の違いと、課税事業者の判定手順について簡単に解説してきました。

設立間もない事業者は資本金による判定があるため、消費税の節税を考えるなら1,000万円以上にならないように注意しましょう。
また、設立2期目の特定期間の判定では、半年間の支払給与の額に気を付けましょう。

納税義務の判定は消費税の中でも特例が多いので、自信がない方は顧問税理士に相談することをおすすめします。

この記事が役に立ったらシェアしてください!

あなたへおすすめの記事

GoogleAdsense関連コンテンツ