消費税の税込経理と税抜経理のメリット・デメリットとは?

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税込経理 税抜経理

経理を始めたときにまず迷うのが、消費税の経理方式ではないでしょうか。
消費税には税込経理方式と税抜経理方式の2種類の経理処理の方法が認められており、どちらを採用すべきか悩ましいところです。

この記事ではそれぞれの方法の概要と、メリット・デメリットについて詳しく解説します。

1.税込経理方式と税抜経理方式

まずはそれぞれの方式の概要を理解してください。

1-1.税込経理方式の概要

税込経理方式による場合、売上の消費税額は売上金額に、仕入の消費税額は仕入金額に含めて計上します。
例えば税抜価格1,000円の商品を販売した場合、売上高に計上される金額は税込価格である「1,080円」となります。

そして消費税額が期末に確定すると、その消費税額を租税公課として経費に計上します。
もし消費税が還付になった場合には、還付となった消費税額を雑収入に計上します。

1-2.税抜経理方式の概要

税抜経理方式とは、消費税額を売上高や経費の金額に含めず、本体価格と消費税を別に分けて処理する方法です。
税抜価格1,000円の商品を販売した場合、税抜経理方式では税抜価格である1,000円を売上高に計上します。

税抜経理方式による場合は、課税売上に係る消費税額は仮受消費税等とし、課税仕入に係る消費税等の額については仮払消費税等とします。

1-3.どちらの方式が一般的なのか

あくまで個人的な考えですが、大企業では税抜経理方式、中小・零細企業では税込経理方式を採用している企業が多いと感じます。

理由は後ほど詳しく解説しますが、大企業が税込経理方式を選択すると決算の数字に与える影響が大きすぎてしまうことが考えられます。
特に監査が義務である上場企業は、大多数がが税抜経理方式を採用しています。

一方中小零細企業が税込経理方式を採用しているのは、「免税事業者は税込経理方式しか選べない」という点が意外と影響しているのかもしれません。
設立初期に税込経理方式で処理していたのをそのまま継続しているといったところでしょうか。
また、売上規模がそこまで大きくない中小零細企業では税込経理方式が決算書の数字に与える影響が少ないということもあるでしょう。

2.仕訳例と消費税額

2-1.仕訳の具体例

税込経理方式と税抜経理方式の具体的な仕訳例を元に、より理解を深めていきましょう。

例:売上100,000円(消費税額8,000円)、仕入80,000円(消費税額6,400円)

税込経理方式の場合
借方 貸方
売掛金  108,000 売上高  108,000
仕入高  86,400 買掛金  86,400
税抜経理方式の場合
借方 貸方
売掛金  108,000 売上高  100,000
  仮受消費税 8,000
仕入高  80,000 買掛金  86,400
仮払消費税 6,400  

比べてみると、税込経理方式の方がすっきりしていて簡単な仕訳であることがわかると思います。
税抜経理方式は消費税額を「仮受消費税」「仮払消費税」に振り替えていく必要があるため一手間増えてしまうのです。

ただし、現在市販されている会計ソフトは自動で振り替えてくれるものがほとんどなので、作業量が増えるということは実質的にはあまりないでしょう。

2-2.それぞれの方法による消費税額

税込経理・税抜経理どちらの方法によっても消費税額は変わりません。
例えば上記で示した仕訳例の場合、納税額はどちらも1,600円となります。
ただし、期末に消費税額が確定した時点での処理方法がそれぞれ異なります。

2-2-1.税込経理方式の消費税額処理

借方 貸方
租税公課  1,600 未払消費税  1,600

税込経理方式では、期末に確定した消費税額を「租税公課」として経費に計上します
また、消費税が還付となった場合はその金額を「雑収入」として収益に計上します。

2-2-2.税抜経理方式の消費税額処理

借方 貸方
仮受消費税 8,000 仮払消費税 6,400
  未払消費税 1,600

一方、税抜経理方式では、「仮受消費税」と「仮払消費税」の期末残高を相殺して、差額を未払消費税とします
要するに期末の消費税処理は損益には影響しないということです。
消費税が還付となった場合も差額を「未収消費税」等の科目で処理し、損益には一切影響しません。

なお、税抜方式の場合は仮受消費税と仮払消費税の差額が数円~数十円生じますが、その差額のみ雑収入等の科目で損益に影響させます。

2-3.決算書にはどのように表示される?

まずはそれぞれの方式による決算書の例を見てください。

【税込経理方式】 【税抜経理方式】
損益計算書 損益計算書
売上高 108,000 売上高 100,000
仕入高 86,400 仕入高 80,000
 売上総利益 21,600  売上総利益 20,000
役員報酬 2,000 役員報酬 2,000
給与手当 3,000 給与手当 3,000
旅費交通費 1,080 旅費交通費 1,000
通信費 540 通信費 500
交際費 540 交際費 500
租税公課 1,440 租税公課 0
 営業利益 13,000  営業利益 13,000

※単位:千円 税率8%

ご覧のとおり、税込経理方式の方が売上高は多く見えますが、最終的な利益は変わりません。

税込経理では期末に確定した消費税額が「租税公課」に計上されるため、利益が確定するのは期末時点ということになります。
その点「仮受消費税」「仮払消費税」は貸借対照表に計上されるため、税抜経理方式は消費税額が損益に影響を与えません。

3.税込経理方式のメリット・デメリット

ここからはそれぞれの方式のメリットとデメリットを考えていきます。
まずは税込経理方式について解説します。

3-1.メリット

3-1-1.処理が簡単

先ほど仕訳例でも示したとおり、税込経理方式は消費税込で仕訳するため、仕訳の処理が簡単である点が挙げられます。
ただし会計ソフトでは税抜処理も自動計算されるのが普通なので、現在ではこのメリットは薄れているでしょう。

そうは言っても個人事業主の方で、会計ソフトを使用していない方は税込経理方式の方が簡単であることは間違いありません。

3-1-2.設立初期から方式を統一できる

設立から2期目までは通常、消費税の免税事業者に該当します(ただし、期首の資本金が1,000万円未満である場合)。

あまり意識している方は多くないでしょうが、実は、免税事業者である期間は税込経理方式しか採用できません
要するに最初はほとんどの事業者が税込経理方式で決算の数字を出しているのです。

したがって課税事業者となってからも方式を変えずに税込経理方式を採用するのは自然な流れと言えるでしょう。
一時的な話ではありますが、方式を変更しないことで前期との比較もしやすくなります。

3-1-3.特別償却の際に税抜方式より有利

法人税の節税対策として、機械などを購入した際の「特別償却」や「特別税額控除」の特例があります。
特別償却の元となる金額は機械等の取得価格となりますが、その取得価格は税込経理方式の場合は税込価格、税抜経理方式の場合は税抜価格となります。

取得価格が大きいほうが制度の恩恵を受けられるため、この点では税込経理方式の方が有利に働きます。

3-2.デメリット

3-2-1.期中の損益が把握しづらい

先ほど解説したとおり、税込経理方式では期末に確定した消費税額を損益に反映させることで最終の利益が確定します。
消費税額が大きければ大きいほど最後に利益がガラッと変わってしまう可能性があるため、期中の数字が正確なものにならないというデメリットがあります。

今期は意外と売上が立っていると勘違いしていたが、決算処理をして消費税を引いたら、実はそれほどでもなかったということが、起こりえます。

3-2-2.減価償却、交際費の判定の際に不利

法人税上、減価償却の特例判定で10万円未満、20万円未満、30万円未満という固定資産の取得価格の条件があります。

この固定資産の取得価格は税込経理方式の場合は税込価格、税抜経理方式の場合は税抜価格となるため、税込経理方式だと取得価格が条件をはみ出してしまい、減価償却の特例が受けられない可能性が生じます。

また、交際費の損金計上限度額である800万円の判定も税込経理方式の方が金額が大きくなってしまうため、限度額ギリギリの方は気をつけた方が良いでしょう。

4.税抜経理方式のメリット・デメリット

ここからは税抜経理方式のメリット・デメリットを解説します。
税込経理方式との違いをしっかり把握しましょう。

4-1.メリット

4-1-1.損益が把握しやすい

税抜経理方式では消費税額はすべて「仮受消費税」「仮払消費税」の科目に集約されるため、損益に一切影響を与えません。
期末にならないと本当の損益が判明しない税込経理方式と違い、税抜経理方式は期中から正確な数字を把握することができます。

消費税額によって最後の最後に利益がガラッと変わってしまうこともないため、余計な心配をしなくて済む面もあるでしょう。

4-1-2.減価償却の10万円、20万円、30万円の判定で有利

法人税では取得した資産の金額に応じて、減価償却の特例を設けています。

  • 少額減価償却資産:10万円未満で購入した資産
  • 一括償却資産:20万円未満で購入した資産
  • 中小企業等の少額減価償却資産:30万円未満で購入した資産(資本金1億円以下の中小法人と個人事業主に限る)

これら特例の適用要件である10万円、20万円、30万円の購入金額は、税抜経理方式であれば税抜価格が、税込経理方式であれば税込価格で判定することとなります。
したがって取得価格が少しでも少なくなる税抜経理方式の方が条件を満たす確率が上がり、有利に働くでしょう。

4-1-3.交際費800万円の判定で有利

中小事業者の法人税上の交際費の損金算入の限度額は800万円です。
この800万円の判定は税抜経理方式であれば税抜価格、税込経理方式であれば税込価格で判定しますので、税抜経理方式の方が有利に働きます。

また、一人あたり5,000円以下の飲食等は交際費ではなく会議費や福利厚生費として処理できますが、この5,000円のラインを考えても税抜経理方式の方が有利と言えます。

4-1-4.建設業の申請書作成が楽

建設業は官公庁に事業内容を記載した申請書を提出する機会が多くあります。
添付する損益計算書は規定の様式で作成しなければなりませんが、その数字は税抜経理方式である必要があります。
もし普段から税込経理方式を採用していると、その際にいちいち作り直さなければならないため二度手間となってしまいます。

4-2.デメリット

4-2-1.経理に手間がかかる

税抜経理方式は仕訳の際に本体の価格と消費税を分けるという一手間が生じます。
市販の会計ソフトを使用していれば自動で振り分けてくれるためデメリットにはなりませんが、もしExcelなどで集計している場合はかなりの手間となるでしょう。

4-2-2.特別償却の金額が減る

機械の購入や設備投資で法人税を節税できる、特別償却や特別税額控除の面では税抜経理方式の方が不利になります。
この特例を適用する場合、取得価格が大きい方がメリットを享受できるため、税抜経理よりも税込経理の方が適しているといえるでしょう。

5.どちらを採用すべき?

税込経理方式と税抜経理方式のメリット・デメリットをそれぞれ解説してきましたが、よりメリットが大きいのは税抜経理方式ではないでしょうか。

制度上の有利不利は先ほど解説した通りですが、何よりも「期中に正しい損益が把握できる」という点が一番大きなメリットです。
税込経理方式のように最後の最後まで本当の利益が分からないのは経営者としては不安ですよね。

とは言え税込経理方式を採用していても大きな影響がない事業者も多いでしょうし、今までの慣れなどもあることでしょう。

そういった点をすべて考慮して、一度税理士に相談してみてはいかがでしょうか。
会計事務所は何も指示しなければ税込経理方式を採ることが多いので、希望があれば伝えるべきです。

6.方式を変更するときに必要なことは?

最初の方で「免税事業者は税込経理方式しか選べない」と解説したとおり、税抜経理方式を採用する場合は経理方式を変更することになります。

経理方式を勝手に変更していいの?と思われるかもしれませんが、経理方式の変更には特に要件はありません
税務署への事前の届出も必要ありませんので、税抜経理方式に変更したいタイミングで自由に変更することができます。

例えば会計事務所に「今日から税抜経理方式に変更したい」と伝えても、会計ソフトで一発で方式を変更できるので不都合は生じないはずです。

まとめ

税込経理方式と税抜経理方式は消費税の問題のみならず、決算書や法人税など様々な面に影響を及ぼします。
どちらの経理方式を選択するかは最終的には社長が判断することです。

しかし、この記事で解説したようなメリットとデメリットがあることは知っておいて損はありません。
どちらも理解したうえであなたの会社に最も適した方式を採用しましょう。

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