消費税が還付される仕組みとは?手続きと注意点を解説

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還付

事業者にとって決して軽くない負担である消費税、その消費税が還付になるという話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

しかし消費税が還付になると言われても、どういった事業者が消費税の還付を受けられるのか、またどんな仕組みで還付になるのか、詳細までは知らないという方も多いでしょう。

そこで、消費税還付の仕組みから還付が発生するケースの具体例、注意点までを解説します。

1.消費税が還付される仕組みとは?

消費税額の計算には、原則課税と簡易課税という2通りの方法があります。
消費税還付を受けることができるのは、原則課税によって計算した場合です。

原則課税では次のように消費税額を計算します。

消費税額=受け取った消費税額-支払った消費税額

要するに売上時に相手方から受け取った消費税額よりも、仕入れや諸経費の支払い時に相手方に支払った消費税額が多ければ、消費税額はマイナスとなり、還付が生じるといった仕組みです。

1-1.非課税売上が多いと還付が生じる?

「売上時に受け取った消費税が0円であれば、支払った消費税が丸ごと還付になるのでは?」と考えた方も多いでしょう。
その考えは半分は正解ですが、実はそうならないケースもあるのです。
それは「課税売上割合」という概念が関係しています。

例えば住宅賃貸業を営んでいる事業者の場合で考えてみましょう。
住宅の貸付けは消費税の非課税取引に区分されているため、住宅賃貸業だけを営んでいる事業者であれば、売上時に受け取った消費税は0円ということになります。
しかし、ここで問題となるのが「課税売上割合」です。

消費税額の計算上、受け取った消費税額から控除できる支払った消費税額には、課税売上割合を乗じる必要があります。
ただし、課税売上割合が95%以上であれば支払った消費税額の全額を控除することが可能です。

課税売上割合が0%の場合

では、住宅賃貸業のみを営んでいる事業者の場合、どのように計算されるか考えてみましょう。
この場合、売上は全て非課税売上なので、課税売上割合は0%となります。
したがってどれだけの消費税を支払っていても、0%を乗じるので控除できる消費税額は生じないのです。

そもそも非課税売上しか生じない事業者は課税売上がゼロなので、「課税売上が1,000万円以下」という免税事業者の要件に該当します。
要するに消費税の申告義務がないため、このような勘違いがミスに直結することは考えづらいところではあります。
しかし、知識として覚えておいて損はないでしょう。

2.消費税が還付されるケースと具体例

先ほど「非課税売上のみが生じているケースは還付にならない」ことを解説しました。
では、還付が生じるのはいったいどのようなケースなのでしょうか。

消費税が還付になるのは、大きく分けて5つのケースが考えられます。
一つずつ解説していきます。

2-1.輸出免税をメインに行っている事業者

非課税売上のケースと似ているようで全く違うのが、輸出免税売上をメインに行っている事業者です。
次のような取引が輸出免税に該当します。

  • 日本から海外へ商品を輸出販売する取引
  • 外国貨物の販売、貸付け
  • 日本と海外にわたって行われる旅客、運輸、通信、郵便等
  • 特許権、著作権等の非居住者(外国人)に対する販売、貸付け
  • その他、非居住者(外国人)に対するサービスの提供で、日本国内で直接便益を享受しないもの

なぜ非課税売上は還付にならないのに、免税売上は還付になるのでしょうか。
それは、免税売上は広い意味で課税売上に該当するからです。

ここでも先ほどの課税売上割合が関係してきます。
免税売上は文字通り消費税が免除されるので、売上時に受け取った消費税額は0円です。
一方、仕入れ時に支払った消費税額に乗じる課税売上割合は、「免税売上=課税売上」と判定されるため、課税売上割合は100%となるのです。

還付の具体例

ではここで、輸出免税売上だけが生じているケースで消費税が還付になる具体例を見てみましょう。

例:輸出免税売上3,000万円(受け取った消費税額0円)、商品仕入代金2,000万円(支払った消費税額200万円)

0円-200万円=200万円の還付

実際には事務所の賃貸料や消耗品の購入や交際費などの各種経費の消費税も控除できるため、これ以上に還付は増えることでしょう。
ただし当然ですが、国内における課税売上が多いケースでは、輸出免税売上が生じていても消費税を納付するケースもあります。

2-2.多額の赤字を計上した場合

売上不振や経費が過剰に発生して多額の赤字を計上した課税期間では、消費税が還付になるケースがあります。
売上時に受け取った消費税よりも仕入れ時に支払った消費税の方が多くなる場合に還付になることを考えれば、これが一番分かりやすい還付のケースかもしれません。

しかし、多額の赤字となった課税期間でも消費税が還付にならないケースもあります。
それは役員報酬や給与、保険料、減価償却費などが要因で赤字となったケースです。

これらの経費は法人税上は損金になりますが、消費税上は仕入れの控除にはなりません。
給与や保険料には消費税が課されていないので、控除できないのは当然ですよね。

事業を行っている方は「今期はこれだけ赤字なのになぜ消費税が生じるんだ」と意外に感じたことがある方も多いと思いますが、それは消費税が課せられていない上記のような経費が原因で赤字となったケースに多いのです。

2-3.年度末の仕入れで大量の在庫を計上した場合

例えば3月決算法人の場合、3月末に来期以降に販売する予定の商品を大量仕入れすることもあるでしょう。
また、販売を見込んで大量仕入れした商品が売れ残り、大量の在庫を抱えてしまっているケースもあることと思います。

その場合、会計上は在庫商品は当期の仕入れから除かれるため黒字になる場合もあるでしょう。
しかし消費税上は仕入れた期に控除することができるため、黒字でも消費税が還付になるケースも有り得ます。

2-4.高額な設備投資や資産の購入をした場合

高額な機械設備や建物などの不動産を購入した場合、会計上は資産計上し、減価償却で数年にわたって費用計上することとなります。
しかし消費税上は、これらの資産を購入した期に一括して控除することができるのです。

例えば5,000万円の建物を購入した場合、その建物分だけで500万円の控除税額(税率10%の場合)が生じます。
こういったケースも消費税還付が生じる仕組みとしては定番と言えます。

2-5.多額の中間税額を納付している場合

前年に納めた消費税額が高額であった場合、翌期に中間納付税額が生じます。
中間納付税額は自己申告しない限り、税務署が前年の消費税額を元に計算した金額を納付することとなります。

しかし、多額の中間税額を納付したにもかかわらず、事業不振や高額な資産を購入した等の理由で、その期の消費税額が前年と比べてかなり少なくなることもあるでしょう。
このケースでは「中間納付税額の払い過ぎ」が原因で消費税が還付になることも有り得ます。
これも具体例を挙げて解説します。

具体例

例:前年の消費税納税額3,937,500円、今期の中間納税額2,499,900円、今期の消費税額2,000,000万円の場合

2,000,000-2,499,900円=499,900円の還付

このように、消費税額が生じていてもそれを上回る中間納付を行っていた場合には、消費税が還付になる可能性があります。

3.消費税還付に必要な手続きとは

消費税の還付を受けるための申告は、法人は課税期間の末日から2か月以内に行います。
個人事業者の場合は毎年3月31日が申告期限です。提出書類は以下の通りです。

  • 消費税および地方消費税の確定申告書
  • 付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書
  • 消費税の還付申告に関する明細書

通常の消費税の確定申告とほぼ同じですが、一点「消費税の還付申告に関する明細書」を提出する点だけが異なります。
この明細書には消費税が還付申告となった理由や、取引先ごとの売上、仕入れの明細などを記載する必要があります。

3-1.さらに追加書類の提出を求められるケースもある

これらの書類以外にも、別途税務署から追加書類を求められるケースがあります。
輸出免税によって還付となった場合は輸出許可書のコピーやインボイスなどを、高額な資産を購入したことが原因である場合はその資産購入時の請求書や領収書などを求められます。

一般的に還付申告をした場合、税務署のチェックが厳しくなると言われています。
還付が確定するまで1ヶ月から長い場合は3ヶ月ほどかかることもありますので、その点は留意してください。

3-2.課税期間を短縮すると資金繰り面で有利

輸出免税売上をメインに行っている事業者の場合、ほとんどの年で消費税が還付になることが確実です。

しかし、商品の仕入れ時には消費税を支払っているにもかかわらず、その消費税を売上時に転嫁できないとなると、資金繰りの面で厳しい状況になることも想定されますよね。
そんな時は課税期間の短縮をすることで状況を改善できます。

課税期間の短縮は、税務署に「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を提出することで可能となります。
課税期間を短縮すれば、年間に4回又は12回の還付申告を行うことができるため、より短期的な周期で還付金を受取ることが可能となります。
現在資金繰りに悩んでいる輸出業者の方は、税理士に相談してみることをおすすめします。

4.消費税の還付を受けられないケース

消費税の還付申告ができるのは、消費税の課税事業者に限られています。
したがって免税事業者は消費税の還付を受けることができません。

設立1期目、2期目の企業や、課税売上が1,000万円以下の事業者で、消費税還付の可能性が高いと見込まれる場合には事前に「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になっておく必要があります。

また、簡易課税制度を選択している場合も消費税の還付を受けることはできません。
簡易課税制度は売上高にみなし仕入率を乗じて消費税額の計算をするため、仕入れの消費税が売上の消費税を上回ることが起こり得ないのです。

もし、簡易課税制度を選択している事業者で、「来期に高額な設備投資の予定がある」「来期から輸出売上が生じる予定」という場合には、事前に簡易課税制度の選択不適用届出書を提出しておく必要があります。

5.「自販機スキーム」は有効か?

自販機スキームとは、課税売上が生じていない事業者が消費税還付を受けるために考え出された手法です。

どういうことかと言うと、例えば来期から住宅賃貸業を行う予定の事業者が、マンションを購入するケースが考えられます。
このケースではマンション購入時に高額な消費税を支払っているにもかかわらず、課税売上が0円であるため、課税売上割合が0%となり消費税の還付を受けることができません。

そこで登場するのが「自動販売機を設置し、販売手数料を得る」という手法です。

自販機の販売手数料は課税売上になるため、その課税期間の課税売上割合は100%となり、支払った消費税の全額が控除可能となります。
自販機の販売手数料自体はそこまで大した額ではないため、設備投資時に支払った支払消費税の還付が可能となります。

税務署による還付の防止対策

以前はこの手法が横行し、消費税の還付を受けることができていました。
しかし税務署もこの手法を問題視し、様々な対策がなされています。

その1つが「課税売上割合が著しく変動した場合」の消費税額の調整です。
1期目の売上が自販機の販売手数料のみで「課税売上割合=100%」となっても、本業である住宅賃貸業を開始すれば課税売上割合は限りなくゼロに近くなってしまいます。
このように課税売上割合が著しく変動した場合、1期目に還付された消費税額は、3期目に納税することになってしまうのです。

そこで考えられたのが、「3期目は課税事業者選択不適用届出書」を提出し、免税事業者となる方法です。
元々非課税売上メインの事業者であれば、課税売上は1,000万円以下である可能性が高ため、免税事業者となることができます。

しかし税務署の対策はさらに進みました。
平成28年度の改正で、「高額特定資産(1,000万円以上の棚卸資産・固定資産)」を取得した場合には、取得した翌事業年度から課税事業者となり、3期の間は免税事業者を選択できないという措置が取られました。
この改正が行われたことによって、自販機スキームはほぼ防がれたと考えられています。

今でも何とかして消費税還付を受ける仕組みを実施している企業もあるようですが、誰でも思いつくような単純な仕組みで消費税還付を受けることは難しくなったと言えるでしょう。

まとめ

消費税が還付になる仕組みについて解説してきました。よくある還付のケースは輸出免税売上がメインである場合や、多額の赤字の計上、大量の在庫を抱えた場合、高額な固定資産の購入、多額の中間納付を行った場合などです。

消費税が還付になるのは嬉しいものですが、還付申告は税務署のチェックが厳しくなります。
必要書類が揃っているかどうかなど、申告前に確認を怠らないようにしましょう。

また、消費税の免税事業者や簡易課税の選択をしている場合、消費税の還付を受けることはできません。
輸出免税売上が生じる見込みや、高額の資産を仕入れる計画がある方は、なるべく早めに税理士に相談しておくことをおすすめします。

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