社会保険料・損害保険料等の消費税は非課税、仕訳方法

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保険

経理業務において、「保険料は原則、消費税非課税」と理解しているのではないでしょうか。

保険料には民間保険と公的保険があり、仕訳の過程では「非課税」の他に「不課税」も登場してきますので、注意が必要です。

1.保険料と消費税の原則

保険料は、保険という金融商品の対価になるので、取引の性質上は、本来は消費税の課税対象となるべきものです。

消費税の課税対象になる取引は、

  1. 事業者が事業として行う
  2. 対価を得て行う
  3. 資産の譲渡(商品や製品の有償販売や資産の貸付け、サービスの提供)

の3項目に該当する取引であり、保険料はすべてに該当します。

1-1.「保険料」は非課税

しかし、課税対象になるべき取引であっても、課税に馴染まないため、または政策的配慮から課税しないことがあります。
保険料の場合は、消費税を課税するには馴染まないため、保険料は非課税取引になります。

これが「保険料は原則、消費税非課税」の仕組みです。

1-2.「保険金」の受取は不課税

課税対象にならない取引には、非課税のほかに不課税もあります。不課税取引とは、そもそも消費税の課税対象にならない取引です。対価を得ない取引は不課税です。給料は労働の対価であり、資産の譲渡の対価ではないので不課税です。

保険をかけると、保険事故が起きたときに保険金が支払われますが、この保険金の受け取りも資産の譲渡がないので不課税です。

いずれも消費税が課されないという点では同じなのですが、保険料は非課税、保険金は不課税です。

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2.民間保険と公的保険(社会保険)

企業の経理担当者が扱う保険には民間保険と公的保険(社会保険ともいう)の2種類があります。

民間保険は民間企業が運営している生命保険、損害保険(火災、地震、自動車など)、海外旅行保険などが該当します。

社会保険には、健康保険(医療保険)、介護保険、年金保険、労災保険、雇用保険があります。

これらの保険料(生命保険料、損害保険料、火災保険料、社会保険料、労働保険料等)はすべて原則、消費税非課税です。

3.保険料支払時と保険料返還時の仕訳処理

保険料の経理処理をみておきましょう。

3-1.社会保険料の仕訳

繰り返しになりますが、社会保険料は非課税です。

企業が事業主負担の社会保険料を支払うときは、費用処理は法定福利費勘定(非課税)になります。
従業員の給与から差し引いた、従業員負担分の社会保険料は預り金勘定を使って記帳します。

具体的に仕訳処理をみていきます。

例えば、社員に4月に300,000円の給料を支払い、社会保険料30,000円、源泉所得税3,000円、市・県民税5,000円を天引きしたとします(労働保険料はここでは考慮しない)。
また、社会保険料の会社負担分は30,500円(子ども・子育て拠出金500円を含む)とします。
このとき次のように仕訳します。

借方金額貸方金額
給料
(不課税)
300,000円普通預金262,000円
  預り金(源泉所得税)3,000円
  預り金(市県民税)5,000円
  預り金(社会保険料)30,000円

この後、社会保険料の会社負担分30,500円を法定福利費(非課税)の勘定科目を使って借方に費用計上します。
このままでは負債が増えてしまうので、貸方に未払費用を計上します。これは「会社が負担する社会保険料の分は収益や費用の事実が発生した時点で計上する」というルールがあるからです。

借方金額貸方金額
法定福利費
(非課税)
30,500円未払費用30.500円

さらに、社員負担分と会社負担分を合算した社会保険料を年金事務所に納付するので、それも仕訳します。

借方金額貸方金額
預り金(社会保険料)30,000円普通預金60,500円
未払費用30.500円  

先ほど記帳した預り金30,000円と未払費用30,500円の2つの貸方勘定を、借方に記帳して過去の仕訳を相殺します。
そして年金事務所に納付した60,500円が普通預金から減っているので、貸方の60,500円を記帳して資産を減少させます。

以上が、社会保険料の一般的な記帳方法となります。

3-2.民間保険料の仕訳

民間保険でも保険料は非課税です。

民間保険では、例えば自動車保険は損害保険料または車両費に仕訳します。
火災保険は保険料に仕訳します。

では、2年分の火災保険料を前払いするときは、どのような経理処理になるでしょうか。この場合は、翌期以降に対応する火災保険料分は前払費用の勘定科目で資産計上し、翌期が到来したら保険料(非課税)の費用勘定に振り替えます。

具体的な仕訳方法を紹介します。

3月31日が決済日の会社が、事務所の火災保険料として3月1日に、2年分24,000円を支払ったとします。
するとこの24,000円は次のような内訳になります。

  • 今期分:1カ月分(3月1日→3月31日)1,000円
  • 翌期分:12カ月分(4月1日→3月31日)12,000円
  • 翌々期分:11カ月分(4月1日→2月28日)11,000円

まずは以下のように記帳します。

借方金額貸方金額
保険料
(非課税)
24,000円普通預金24,000円

さらに、翌期分を「前払費用」、翌々期分を「長期前払費用」として次のように記帳します。

借方金額貸方金額
前払費用12,000円保険料
(非課税)
23,000円
長期前払費用11,000円  

これで今期分の火災保険料1,000円(=保険料24,000円-前払費用12,000円-長期前払い費用11,000円)を計上できました。

そして翌期の期首に次のように記帳することで、翌期の火災保険料12,000円を費用計上できます。

借方金額貸方金額
保険料
(非課税)
12,000円前払費用12,000円

3-3.保険料の戻りの消費税の課税区分と仕訳

民間保険では、保険料返還などの名目で「お金が会社に入ってくる」ことがあります。また、労働保険でも払いすぎた保険料が還付されて戻ってくることがあります。
これらのお金は非課税になります。

例えば口座に10,000円の保険料返還があれば、記帳は次のようになります。

借方金額貸方金額
普通預金10,000円保険料
(非課税)
10,000円

「保険料が戻ってきただけ」と考えることができるので、保険料を支払ったときの「逆」にして、貸方に保険料を記帳します。

3-4.確定拠出年金の仕訳

最後に、保険料ではありませんが、日常の経理業務に登場する確定拠出年金の処理方法を紹介します。

確定拠出年金は、企業と社員(加入者)が一定額の掛金を拠出して、外部で運用し、その元金と益金を年金とする仕組みです。

確定拠出年金の保険料のうち従業員が拠出する部分は、会社としては預っているだけなので不課税となります。

企業が負担する掛金も不課税です。企業が負担する掛金は「退職給付費用」として計上します。このとき、退職給付引当金の経常は行いません。企業としては掛金を拠出すればその時点で退職金に関する債務がなくなるからです。

企業が拠出金を50,000円を支払った場合、記帳は次のようになります。

借方金額貸方金額
退職給付費用
(不課税)
50,000円普通預金50,000円

4.保険手数料の消費税はややこしい

企業の経理担当者の仕事には直接関係しないかもしれませんが、保険手数料についてみておきます。

例えば企業が損害保険に加入したとします。保険代理店からすると、企業から損害保険の契約を獲得できたことになります。するとその保険代理店は、保険会社から保険手数料という報酬を得ます。つまり保険手数料は保険代理店の収入です。

保険会社からすると保険手数料はコストです。そのコストは契約者(ここでは損害保険に加入した企業)に転嫁されます。
したがって、損害保険に加入する企業が支払う保険料には、保険手数料分が加わっています。しかしその保険料(=保険料+保険手数料)は「保険料」なので非課税です。

ところが、保険会社と保険代理店の間の保険手数料には消費税がかかります。保険手数料は、保険契約という役務に対する対価であり課税に相当するからです。

つまり、保険料(+保険手数料)を支払った企業側からすると非課税のため、税額控除ができません。
一方で、保険会社が保険代理店に支払う保険手数料には課税されています。
よって、消費税の二重課税の状態が発生しています。

非課税取引においては、このような状況がよく起こりえます。

5.消費税が増税されると保険料は上がるのか

消費税が増税すると、保険料は上昇するのでしょうか。ここでも「原則上がらない、例外的に上がる」ことになります。

5-1.通常の保険料は上がらない

2019年10月に消費税率が上昇すると、民間保険の保険料は値上がりするのでしょうか。保険料は保険会社が決めるので、消費増税のタイミングで値上げする可能性はゼロではありません。

しかしほとんどの民間保険は、消費増税のタイミングで値上げしないとみられています。それは、保険料には消費税がかからないからです。
消費税がかからないのに消費増税のタイミングで値上げをしたら、消費者の反感を買うでしょう。

ただ、これにも例外があります。

5-2.【例外】自動車保険だけは保険料が上がるかもしれない?

民間保険のなかで唯一、消費増税のタイミングで値上がりする可能性があるのが自動車保険の保険料です。2014年に消費増税が5%から8%に上がったときも自動車保険の保険料が値上がりしました。

自動車保険の事故処理のなかで発生する自動車の修理代の支払いや、被害者が病院に通院するときなどに支払う交通費に消費税が課税されるからです。
つまり、自動車保険のコストに消費税がかかることが多いので、その分は保険料に上乗せしても消費者の理解は得られるだろう、という考え方です。

ただ保険料金を値上げするかどうかは保険会社が独自に決定するので、経理担当者は注視する必要があります。

5-3.社会保険料は本当に値上げではないのか

社会保険料は消費税が課税されないので、2019年10月の消費増税に合わせて社会保険料が値上がりすることはなさそうです。
しかし「実質的な値上げではないのか」と感じさせる処置が行われます。

厚生労働省は2019年1月に、10月の消費増税に伴い、病院やクリニックが受け取る初診料を、現行の2,820円から2,850円前後に値上げする方針を打ち出しました。1%の値上げになります。

初診料は、健康保険に加入している患者が原則3割負担し、保険者が原則7割負担します。確かに、患者が負担するこの原則3割は「初診料という治療費」であり「保険料」ではありません。したがって、健康保険の保険料が上がっているわけではありません。

さらに、初診料を値上げするのは、病院やクリニックの購入品には消費税がかかるので、病院やクリニックの税負担を減らすために収入(初診料)にも消費増税分の一部を上乗せする狙いがあります。

しかし、患者の「財布」の観点からすると、健康保険の保険料が値上がりしなくても、初診料が値上がりすれば負担感が大きくなるのは同じです。

まとめ

保険料と消費税の関係は「原則非課税」と覚えておいてください。
ですので、消費税増税でも保険料の扱いには変化はありません。

ただ、自動車保険だけは、自動車の修理費や被害者の通院交通費などの補償に消費税が絡んでくるので、消費増税のタイミングで保険料が値上げになるかもしれません。

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