不動産の消費税還付による節税は現在でも可能か?

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年金制度に不安が残る現代にあって、不動産投資に興味を持つ方も増えてきているようです。
不動産投資のメリットのひとつとして、「不動産投資を利用すれば消費税還付が受けられる」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

実際その手法は一昔前まで常識的なスキームとされていたのですが、果たして現在でも有効な手法なのでしょうか?

この記事では、不動産投資によって消費税が還付になる仕組みと、現在でも不動産投資で消費税還付を受けることができるのかどうか、順を追って解説します。

1.消費税が還付になる仕組み

まずは基本的な所から確認しておきましょう。
消費税額の計算は、売上時に預かった消費税から経費支出時に支払った消費税をマイナスして計算します。

例:課税期間中の売上高が10,000,000円、支払経費額が8,000,000円の場合

10,000,000円×10%-8,000,000円×10%=消費税額200,000円

厳密に言えば経費のうちにも消費税がかかるものとかからないものがあり、それらを区分する必要がありますが、単純に説明するとこれが消費税計算の基本中の基本の考え方です。

これを元に考えると、もし売上時に預かった消費税よりも経費支出時に支払った消費税の方が多ければ、消費税は還付されることになりますよね。

例:課税期間中の売上高が8,000,000円、支払経費額が10,000,000円の場合

8,000,000円×10%-10,000,000円×10%=消費税額△200,000円

消費税額が還付となるのは、上記のケースのように「受け取った消費税より支払った消費税の方が多いケース」と覚えておいてください。

2.不動産投資における消費税還付の仕組み

先ほど解説した消費税還付の仕組みから考えると、不動産賃貸を行う事業者は次の3つの条件を満たせば消費税の還付を受けることができるように思えます。

  1. 「消費税課税事業者選択届」を提出し、消費税の課税事業者になること
  2. マンションを購入すること
  3. その課税期間の収入が「住宅賃貸」のみであること

このケースではマンションの購入時に消費税を支払っている一方、住宅賃貸収入は非課税売上なので受け取った消費税は0円となります。
理論上はマンション購入時に支払った消費税が丸々還付になりそうに思えますよね。

しかし、実際には「課税売上割合」という制度があるため、このような単純な考え通りに還付にはならないので注意が必要です。

2-1.課税売上割合という概念

課税売上割合は税務に関わっている人でないと聞きなれない単語かと思います。
課税売上割合を簡単に説明すると、次の式で算出される割合を言います。

課税売上割合課税売上高+免税売上高 
課税売上高+非課税売上高+免税売上高 

実は消費税の計算上、経費支出時に支払った消費税を丸々控除できるわけではなく、支払った消費税に課税売上割合を乗じた金額が実際に控除できる消費税額となるのです。(ただし、課税売上割合が95%以上かつ課税売上高が5億円以下である場合は全額控除できる。)

例:課税期間中の売上高が8,000,000円、支払経費額が10,000,000円、課税売上割合が70%の場合

8,000,000円×10%-10,000,000円×10%×70%=消費税額100,000円

このように、支払った消費税額の方が多くても、課税売上割合が低ければ消費税の還付を受けることはできなくなります。

さらに言えば、その課税期間に住宅賃貸などの非課税売上しかない場合、課税売上割合は「0%」となってしまいます。
こうなるとマンション購入時に支払った消費税額は全く控除することができません。

例:住宅賃貸収入が8,000,000円(非課税売上)、マンション購入費用が50,000,000円(課税仕入)、課税売上割合が0%の場合

0円-50,000,000円×10%×0%=消費税額0円

その課税期間に非課税売上しかないため課税売上割合が0%となり、どれだけ多額の仕入れを行っていても消費税の還付を受けることができないのです。

2-2.課税売上割合による制限を回避する

この課税売上割合による制限を回避するために考え出された手法があります。
それがいわゆる「自販機スキーム」という手法です。
自販機スキームの流れを簡単に解説すると次のようになります。

  1. 前提として、マンションを購入した課税期間には、住宅賃料を生じさせないようにする
  2. マンションを購入した課税期間に、自販機収入を生じさせる
  3. 1、2により、マンション購入時の課税期間は課税売上割合が100%となり、マンション購入時に支払った消費税のほぼ全額が還付される

正攻法でいくとマンション購入時の課税期間に住宅賃貸収入が生じてしまい、課税売上割合が低くなってしまいます。
それを避けるため、マンション購入時の課税期間には住宅賃貸収入を生じさせないようにします。

そのうえで自販機収入など少額の課税売上を計上すれば、課税売上割合が100%となるため、マンション購入時に支払った消費税額の還付を受けることができるという流れです。

例:自販機収入が100,000円(課税売上)、マンション購入費用が50,000,000円(課税仕入)、課税売上割合が100%の場合

100,000円×10%-50,000,000円×10%×100%=消費税額△4,990,000円

以上が自販機スキームの概要となります。

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3.2度の税制改正による対策強化

気になるのは自販機スキームが現在も有効な手法なのか?という部分でしょう。

現在では税務署も対策を進め、近年の2度の消費税法改正によって自販機スキームによる消費税還付は難しくなりました。
改正は平成22年と平成28年に実施されたのですが、どのような対策がなされたのか少しだけ触れておきます。

3-1.平成22年度改正

平成22年の改正により、課税事業者選択届出書を提出後、2年以内に不動産を購入または建築した場合には、その後3年間免税事業者に戻ることができなくなりました。

複雑な話になるので詳細は省きますが、噛み砕いて解説すると、マンション購入時に消費税の還付を受けたとしても、3年後の課税期間に調整計算の必要が生じ、調整税額を納付しなければならなくなったと理解してください。

要するに一時的に還付を受けることができたとしても、「3年トータルで見たらチャラ」というイメージです。

3-2.平成28年度改正

平成22年の改正ではまだ消費税還付が可能な抜け道があったため、平成28年にさらなる改正が行われました。

この改正で、建物など1000万円以上の高額資産の購入や建築をした場合、3年間は消費税の免税事業者になることができなくなったのです。
これにより消費税の還付金を受け取っても、3年後に必ず調整計算をしなければならなくなりました。

4.今でも合法的に還付を受けることは可能?

自販機スキームが厳しくなった現在、もう不動産投資を利用して消費税還付を受ける手段は残されていないのでしょうか?
かなり規制が強化されたのは事実ですが、絶対にできないのか言うとそんなことはなく、理論上は可能ではあります。

4-1.消費税還付を受けるための大前提

まずは以下の2点を満たしていることが前提です。

①消費税課税事業者選択届を提出していること

新規設立の会社は、通常設立初年度~2期目まで消費税の納税義務が免除されます。
消費税還付を受けるためには消費税の申告をしなければならないため、消費税の課税事業者になっておく必要があるのです。

設立初年度中に課税事業者選択届出書を提出すれば設立初年度から課税事業者となることができるため、還付申告をしたい方は忘れずに提出しておく必要があります。

②新規設立会社であること

既存の会社ですでに不動産賃貸収入が生じている会社だと、多額の非課税売上が計上されるため多くの還付金を受けられる可能性がかなり薄くなってしまいます。
また、事務所や店舗の賃貸など課税売上が生じている会社だと、逆に消費税の納付が生じてしまう可能性もあるでしょう。
したがって新規設立のまっさらな法人が最もやりやすいと言えます。

4-2.不動産を購入した期の注意点

不動産を購入した期は、以下の2点を満たしている必要があります。

①少額の課税売上を計上する。

課税売上を計上する方法は、金の売買が適しているとされています。

②住宅賃貸収入を生じさせないこと

不動産を購入した期には住宅賃貸収入を発生させないことが重要です。

この2点により課税売上割合を100%にすることができます。

4-3.不動産を購入した期の翌期・翌々期の注意点

ここが一番難しいところです。
「課税売上割合が著しく変動した場合」に該当させないための工夫が必要となります。
マンション購入の翌々期に、次の1と2の比較で「著しい変動」に該当してしまうと、調整税額を納付しなければならなくなります。

  1. 仕入時の課税売上割合
  2. 仕入時~翌々期までの3期分の通算課税売上割合

著しい変動に該当するかどうかの判定は次の2点により行われます。

  1. 仕入時の課税売上割合と通算課税売上割合との差が5%以上であること(変動差)
  2. 上記1.変動差÷仕入時の課税売上割合が50%以上であること(変動率)

上記2つの条件のいずれにも該当してしまうと「著しい変動」に該当することとなります。
著しい変動に該当しないようにするためには、2期目、3期目に課税売上をどれくらい計上しなければならないかを計算しておく必要があります。

単純に考えれば、家賃収入は非課税売上であるため、それと同等以上の課税売上を計上していれば、著しい変動には該当しません。
課税売上は先ほど触れた通り、金の売買が最も手軽な方法です。

例:課税売上割合が1期目100%、2期目52%、3期目52%の場合

  1. 通算課税売上割合…(100%+52%+52%)/3=68%
  2. 変動差…100%-68%=32%≧5%
  3. 変動率…32%/100%=32%<50%

上記の例では変動差は5%以上となってしまったものの、変動率が50%未満であるため著しい変動には該当しません。

このように細かな計画に基づいて課税売上を生じさせるためには、すでに事業を開始してしまっている既存法人ではやはり難しいでしょう。
そういった意味で、新規設立法人が最も適していると言えます。

5.脱税に当たるのか?

「ここまで恣意的に課税売上割合を操作するのは脱税では?」と考える方もいるかもしれません。

まず、理解していただきたいのは、脱税とは事実の仮装・隠蔽など、事実を改ざんする行為を指します。
例えば消費税還付を受けるために架空の仕入や外注費などを計上して社長が逮捕されるような事件が日常的に発生していますが、そのような行為が脱税行為に当たると理解してください。
したがってこの記事で解説した内容を実行するだけであれば、脱税には当たりません。

しかし、この消費税還付の手法が「租税回避行為」に当たるかどうかは税務署や税理士によっても意見が分かれるところです。

租税回避行為とは、法律の範囲内の行為ではあるが、税金逃れ以外に合理的な理由が無い活動のことを指します。
法律には違反していなくても、税務署が「租税回避行為だ」と認定してしまえば否認される可能性は常にあるのです。
先ほど紹介した手法は事実を捻じ曲げているわけでもなく、架空取引を行ったわけでもなく、全て法律の範囲内での適法な行為ではありますが、否認されるリスクが常に付きまとう可能性も頭に入れておいてください。

まとめ

不動産購入時に消費税還付を受ける仕組みと手法について解説してきました。

自販機スキームへの対策がなされて難しくなったことは間違いありませんが、現在でも方法はあることは分かっていただけたと思います。
ただし、税金面で大きな得をする行為には常に税務署の厳しいチェックが入ると考えておいた方が良いでしょう。
それらのリスクを承知で消費税還付を目指すのであれば、消費税還付経験の豊富な税理士に依頼したうえで対策を講じてください。

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