ポイントの付与・利用時の仕訳と消費税~新収益認識基準に対応~

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ポイントを付与する側における会計処理は複雑さを伴い、難しいと言われています。

ポイント還元制度が導入されるにあたって、ポイントに関する処理がより身近になると予想されますが、ここでポイントを付与する側の会計処理について従来の方法および新基準(新収益認識基準)による方法について整理しておきましょう。

1.ポイント制度の概要

まず始めに、「ポイント制度」の概要をおさらいしておきましょう。

「ポイント制度」の正式名称は、「キャッシュレス・消費者還元事業」といいます。

消費者が対象店舗での買い物やサービス利用時にクレジットカード・デビットカード・電子マネー・QRコードなどの現金以外の方法(キャッシュレス)で決済を行うと、国の支援で一定のポイントが付与される制度です。

コンビニエンスストアや外食チェーン店でのポイント還元率は2%となっており、その他の店舗については最大5%のポイントが付与される予定です。

ポイントの還元方法はキャッシュレスの決済手段ごとに異なり、ポイント付与・即時充当・引落相殺・口座充当などがあります。

「ポイント還元制度」は、2019年10月1日から翌年6月末までの9ヶ月間実施されます。

2.従来のポイント付与の会計処理方法

実は、ポイント制度の会計処理方法には明確な基準がありません。

しかし、現在までもポイント制度を導入している会社はたくさんあります。ここでは、ポイント制度を採用している会社の従来の会計処理方法をご紹介します。

まず、ポイント制度には2つのタイプがあります。

  1. 自社がポイント発行して、ポイントの付与、割引を行う「自己完結型
  2. 他社がポイント発行して、ポイントを付与、割引を行う「提携型

この2つのタイプによって会計処理方法が異なります。

今回は①の「自己完結型」を例に従来の会計処理をご紹介します。「自己完結型」は、自社のみでポイントサービスを行っているケースが該当します。

購入者に自社でのみ使えるポイントを付与し、割引を行うサービスです。

従来の会計処理では、発行したポイントの未使用残高は将来使用される見込みがあるため、期末に「ポイント引当金」を設定します。

「ポイント引当金」の設定は、期末のポイントの未使用残高に、過去の実績率などにより将来の使用見積率を乗じて計算します。

従来のポイント付与についての一連の会計処理を例とともに見ていきましょう。

2-1.ポイント付与時の会計処理方法

例)10,000円の商品を現金で販売し、1,000円分ポイントを購入者へ付与した。自社の過去のポイント使用状況によれば、ポイントは全て使用されると考えられる。

ポイント付与時の会計処理

借方科目金額貸方科目金額
現金10,000円売上高(課税売上)10,000円

ポイントは使用された時点で売上の値引き、又は販売促進費として取り扱われます。ポイント付与時点ではポイントに関する会計処理は行いません。

2-2.ポイント使用時の会計処理方法

購入者がポイントを使用した場合は、販売代金がポイントにより差引かれるため会計処理が必要になります。

ポイントの性質をどう捉えるかにより、次の2つの会計処理方法が考えられます。

  1. ポイントが現金値引きと同様の効果を有する点に着目し、売上値引きとして処理する考え方
  2. ポイントの付与は将来の販売促進効果を有する点に着目し、販売促進費とする考え方

例)購入者が500円分のポイントを使用して、10,000円の商品を購入し、9,500円の支払いを行った。

ポイント使用時の会計処理

借方科目金額貸方科目金額
現金9,500円売上高(課税売上)10,000円
売上値引 または
販売促進費(売上に係る対価の返還等)
500円  

2-3.期末決算時の会計処理方法

購入者へ付与したポイントのうち、期末に未使用のポイントについてはポイント引当金を設定します。ポイント引当金は、過去の実績率などにより将来の使用見積率を用いて計算を行います。

例)期末のポイントの未使用残高は500円分のポイント。過去のポイントの使用状況は100%となっている。

借方科目金額貸方科目金額
ポイント引当金繰入500円ポイント引当金500円

具体的なポイント引当金の算定式は次のようになります。

ポイント引当金=ポイント残高×(1-失効率)×1ポイント当たりの単価

期末に行うポイント引当金の設定については、企業会計原則の規定により引当金の計上が必要になります。

しかし、法人税法上では「債務確定主義」が規定されているため「ポイント付与時」には税務上の損金となりません。

ポイント引当金についても将来の見積債務であり、確定債務ではないため、税務上の損金となりません。

3.新収益認識基準

「新収益認識基準」とは、企業会計基準委員会(ASBJ)が2018年3月30日に公表した「収益認識に関する会計基準の適用指針」のことをいいます。

この「新収益認識基準」の中には、ポイントプログラムの会計処理方法についての規定も盛り込まれています。

原則的には2021年4月からの導入となっていますが、2018年4月1日以後から早期適用も可能であるため、注目度が高くなっています。

また、この基準の適用範囲は、公認会計士の会計監査が義務付けられている法人です。

3-1.新収益認識基準の会計処理方法

「新収益認識基準」のポイントについての考え方は、「ポイント付与時」に付与したポイントを別個の履行義務としなければなりません。

取引価格を商品の販売で付与したポイントを独立販売価格(通常の販売価格)の比で配分し、ポイントが使用された時点で対応する収益を認識する方法です。

この「新収益認識基準」では、5つのステップにより収益を認識しなければいけないと規定されています。例を使って、「新収益認識基準」が要求する5つのステップを見ていきましょう。

例)300,000円の商品を現金で販売し、購入者に3000円分のポイントを付与した。過去の実績により、付与したポイントは100%消化されると考えられている。また、ポイントは顧客にとって重要な権利である。

ステップ1:契約の識別、契約の変更

「新収益認識基準」の最初のステップは、収益認識の単位となる「契約の識別」をすることです。例では、「商品の販売」という契約の識別が行われます。

ステップ2:履行義務の識別

次のステップは、「履行義務の識別」です。

「履行義務」とは、購入者との契約において、物やサービスのいずれかが購入者に移転する約束のことをいいます。

ステップ2では、ステップ1で識別した契約により、どのような物やサービスが購入者に移転することになるのかを識別します。

例では、「商品の引き渡し」という履行義務が識別されます。また、ポイント付与についても「履行義務の識別」が必要になります。

ポイント付与は、将来における商品の販売、又はサービスの提供についての義務の一部を構成するという考え方になるためです。

ステップ3:金額の算定

ステップ3では、取引価格の算定を行います。

通常の取引では売買契約書等に金額が明示してあります。例では「300,000円」が取引価格となります。

ステップ4:金額の配分

ステップ4では、「独立した履行義務への取引価格の配分」を行います。

例では、取引価格300,000円を、独立販売価格(企業が約束した財、又はサービスを単独で販売する場合の価格)の比率に基づき、各履行義務(商品とポイント)の金額を配分する必要があります。

要するに、取引価格300,000円の中に商品の価値とポイントの価値が含まれているため、按分計算を行わなければなりません。

<具体的な計算式>
取引価額300,000円を商品300,000円、ポイント付与3000円分の合計額303,000円で配分する計算を行います。

商品の価値:300,000円×300,000円/(300,000円+3,000円)=297,030円
3,000円分のポイントの価値:300,000円×3,000円/(300,000円+3,000円)=2,970円

 

ステップ5:履行義務の充足

最後のステップは、「履行義務の充足による収益の認識」です。

ここでのキーワードは、「支配の獲得」になります。

購入者が支配の獲得をするのはいつなのかが重要になります。例では、300,000円の商品の販売は、販売時点で履行義務が充足されていますので、「収益の認識」を行います。

一方、ポイントについては、購入者がポイントを使用した時点で履行義務が充足されます。つまり、商品の販売時点ではポイントの「収益の認識」は行われません。

4.新収益認識基準による実際の会計処理方法

前章で確認した「新収益認識基準」の5つのステップを使った実際の会計処理を前章と同じ例を使って見ていきましょう。

商品販売時・ポイント付与時

借方科目金額貸方科目金額
現金300,000円売上高(課税売上)297,030円
  契約負債2,970円

ステップ5の「履行義務の充足」でご紹介したとおり、商品の販売時点ではポイントの「収益の認識」は行われません。しかし、将来的にポイントを使用される見込みがあるため「契約負債」として負債の部に計上します。

ポイント使用時

借方科目金額貸方科目金額
契約負債2,970円売上高(課税売上)2,970円

ポイントが使用されたことにより「履行義務の充足」がなされて、「収益の認識」が行われます。

そのため、対応する契約負債を売上高に振替える処理を行います。

また、ポイントに利用期限が設定してある場合で、ポイントが期限内に使用されなかった場合も、契約負債が消滅することになります。ここで「収益の認識」が行われるため同様の会計処理が必要です。

まとめ

今回は、「従来の会計処理方法」と「新収益認識基準」の会計処理方法をご紹介しました。

「従来の会計処理方法」では、ポイントが使用された時のみ会計処理を行い、期末で未使用のポイントについては、「ポイント引当金」の計上を行います。

それに比べ「新収益認識基準」による会計処理方法は、ポイント付与時にポイントの「履行義務」に一定の収益を配分することで、ポイント付与時・ポイント使用時に適切な収益の配分ができるような会計基準になっています。

キャッシュレス化が進み、ポイントを使った販売促進方法がこれからもいろいろなところで使われていくと思われます。

そして「新収益認識基準」によるポイントについての会計処理方法も、これからいろいろな企業で使われることになるでしょう。

独立販売価格によるポイントの価格の見積もり、ポイントを使用した時の「収益の認識」という点をしっかり理解しましょう。

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